着てなんぼ。

 

物を作るうえでも、物を伝えるうえでも、なぜ自分がそれをしているのかを説明できるストーリーやコンセプトは必要だと思います。ただ、それらはあくまできっかけを生み出すためのものであって、それ自体を追い求めすぎると見栄えも良く分かりやすく広がりやすくはなっていく一方で、ものそのものから意識が離れてしまいメーカーとしては長く続けにくくなるのではないかと感じています。

たとえば、洋服をアートや工芸、地場産業や文化になぞらえて語る場面を目にすることがありますし、取り扱いのギャラリーから同じような語り口を求められたこともありました。けれど、洋服の本質は飾ることでも集めることでも語り合うことでもなく、着てこそ意味が生まれるところにあると思っています。そうした文脈を重ねすぎてしまうと本来とは少し異なる認識のまま手渡してしまう危うさも生まれます。

 

左/1年間着用した Power Dry のTシャツ
右/今期の新しい Power Dry のTシャツ

ほとんど劣化が見られず、この素材の頼もしさがよく分かります。
実際、購入してくださる方の9割以上が前年にも買ってくださったお客様です。

 

この仕事は、新規のお客様を増やすこと以上に一度買ってくださった方にもう一度来ていただくことのほうがずっと難しいと思っています。常に新しいことに挑戦し飽きずに楽しんでいただく工夫も必要ですし、買っていただいて終わりではなくて実際に使ってみて本当に良かったと感じてもらえるものでなければ次の機会はまず訪れません。

本当にありがたいこと、今の私たちは多くのリピーターのお客様に支えていただいています。だからこそ新しいお客様を広げることだけを目指すよりも、実際に手に取ってくださった方に買って良かったと思っていただけるものを作り伝え続けることを地味に地道に。
その積み重ねによって長く付き合っていただける関係を育てていくことのほうが、健全な運営につながるのではないかと思っていますし、そこにこそやりがいも感じています。