毛が生えたような話。
高い!高い!と言われているけれど、、、実際のところ衣料用の原料価格の高騰そのものは、少し前からはいったん落ち着いてきていると思います。もちろんここ数年で見れば上がってはいるものの、一時のひたすら値上がりしているという状況ではなくなっています。 急激に原料が値上がりしたり、不景気になったりすると、糸ロスの少ないニットや、原料の質が表情に響きにくいデニムのような生地の服が流行ると、勝手に私は思いこんでいるのですが、(※あくまで個人的主観です) そういう格好の人も一時期より少なくなってきたので、「ああ、そういうことだな!」と、ふむふむ勝手に納得していたり。 そもそも今まで通りの作り方ではない作り方や売り方で工夫をすれば同じアイテムでも2割程度のコストアップで済ませられると思ったり、、、(※あくまで個人的主観です)
主題である毛(ウール)に関しても、ここ数年でだいぶ値上がりしたのですが、私の肌感では原料の質はむしろ少し落ちたように感じています。(※あくまで個人的主観です)というのも、定番で作り続けているまったく同じ素材なのに、表情が思うように出なかったり、お客様からダイレクトに「前は毛玉が気にならなかったのに、今回は毛玉が気になるわっ!」という声をいただくことがあったからです。高くなったのに何だかちょっと損した気分になるのは良くないなと思い、対策を打つことにしました、、、、糸の段階でウォッシャブル加工を施してみたり、カーシートのようにしっかりと縮絨してみたり、ジャカードキルティングのように中に閉じ込めてみたりと、ウールの繊維の質感そのままの表情を活かすというよりは、その“弱さ”を加工や構造でカバーしながらウールを使っていこうと、一昨年から試行錯誤を続けています。
「素材の質が良くない」なんてことは、本来メーカーとしてあまり大きな声で言うべき話ではないのかもしれませんが、毛玉や型崩れをどうしても“味”とは思えない私としては(※あくまで個人的主観です)、来年以降も、そうした弱さを補う工夫のバリエーションを増やしながら、気兼ねなく付き合えるような素材(洋服)にしてから皆様にお届けできたらと思っています。だからどうか、「ウール本来の質感が……」なんて言わずに、その工夫ごと楽しんでいただけたら嬉しいです。

↑ イギリスで見た羊たちの群れ。 ヒツジはヤギと仲良く出来る??
もう少しウール絡みで
……などと書くと、今度は「じゃあコットンやリネンはどうなんだ」という話にも広げてしまいます。コットンやリネンのような天然繊維だって大量の水やエネルギーを使い、土地を拓き、もともとそこに住んでいた植物や昆虫や動物たちが住みにくい状況になってしまい。自然?動物?環境?愛護の観点からすると十分に“迷惑”な存在だと思います。(※あくまで個人的主観です) それならいっそ、コットンもリネンも一切使わないメーカーを目指すのが正しいのかもしれない……そんなこと言っていたら、そのうち「実は工場で管理されている化繊こそが、いちばん環境に良い」なんて話が出てきたりしてもおかしくはない……とかね。
結局のところ、人間はいつもどこかで誰かに負担をかけながら、自分たちの都合のいい物語をつくって生きているのだろうなと冷ややかに私は思います。究極は何も作らないのが一番良いに決まってる。それでも、それでもと、やっぱり何かを作りたいと思うのならば、せめて誰かの役に立つものであったら良い。そういうものだけを、できるだけ”正義”のふりをせず”誠実”に作り続けたいなとは思っています。今日も明日も来年も迷惑をかけながら沢山に迷惑をかけながら。
以上、似たような靴下を作っているメーカーさんに「これは模倣にあたるのでは?」と問い合わせたところ、先方の弁護士から「御社の靴下なんて知らない。弊社は金平糖モチーフであり、そんなことみんなに言ったら名誉毀損で訴えるよ」との返答をいただきました。
以来、何を書くにも「※あくまで個人的主観です」と添える癖が、すっかり染みついた今日この頃です。
